1 クラウドの定義と利点

クラウドコンピューティングとは、インターネットを通じてITリソース(サーバー、ストレージ、データベース、ネットワーク等)をオンデマンドで利用できるサービスです。使った分だけ料金が発生する「従量課金制」が基本です。

試験頻出の定義
「オンデマンドで利用可能」「インターネット経由でアクセス」「使った分だけ支払う従量課金制」「大規模なインフラを所有・管理せずに利用できる」——この4点がクラウドの本質です。

従来のオンプレミスとの比較

比較項目オンプレミスクラウド(AWS)
初期投資大きい(サーバー購入等)ほぼゼロ
拡張性物理的に制限される数分で拡張・縮小可能
コスト形態資本的支出(CapEx)運営的支出(OpEx)
運用管理自社で全て管理インフラはAWSが管理
グローバル展開多大なコスト・時間数分で世界展開可能
ミニクイズ
Q. クラウドコンピューティングの料金モデルとして最も正確なものはどれですか?
A
月額固定料金で全サービスが使い放題
B
使用したリソースの量に応じて課金される従量課金制
C
年間契約のみで、途中解約不可
D
ハードウェアを購入して使用する形態
正解は B。クラウドは「使った分だけ支払う(Pay as you go)」従量課金制が基本です。予め大量のリソースを購入(CapEx)する必要がなく、OpEx(運営コスト)として費用を計上できます。

2 AWSの6つのメリット

AWS は公式に「クラウドコンピューティングの6つのメリット」を定義しています。試験では各メリットの内容を問う問題が頻出です。6つ全て覚えましょう。

① 固定費を変動費に変換
大規模な初期投資(CapEx)が不要。使った分だけ支払うOpExモデルへ。
② 規模の経済のメリット
AWSの膨大な顧客規模により、個別に運用するより低いコストを実現。
③ キャパシティ予測が不要
過剰購入・不足の心配なし。需要に応じてリアルタイムにスケール。
④ 俊敏性と速度が向上
数分で新しいITリソースを利用開始。開発者の実験コストが激減。
⑤ データセンター管理が不要
インフラ管理をAWSに任せ、ビジネスに集中。運用コストを削減。
⑥ 数分で世界展開
AWSの世界中のリージョンに、わずか数クリックでデプロイ可能。
ミニクイズ
Q. AWSクラウドの利点として「規模の経済のメリットを享受できる」とはどういう意味ですか?
A
自社のシステム規模を大きくするほど割引が増える
B
大企業のみが利用できる特別プランがある
C
AWS全体の膨大な利用者数により、個人・企業が独自に運用するよりも低コストを実現している
D
利用リソースを増やすと自動的に無料になる
正解は C。AWSは数百万の顧客を持ち、大量仕入れによるコスト削減を全ユーザーに還元しています。つまり、個社が独自でデータセンターを運営するより安く利用できます。

3 AWS Well-Architectedフレームワーク

AWSのシステムを「よく設計されたアーキテクチャ」にするための6本柱のフレームワークです。試験ではそれぞれの柱の定義・設計原則が問われます。

Pillar 1
運用上の優秀性
Operational Excellence
システムを実行・監視し、プロセスを改善し続ける。小さな変更を頻繁に行い、障害から学ぶ。
Pillar 2
セキュリティ
Security
情報・システムを保護する。強力なアイデンティティ基盤、追跡の有効化、全レイヤーでのセキュリティ適用。
Pillar 3
信頼性
Reliability
障害から自動回復、需要に合わせた動的スケーリング、水平スケーリングによる可用性の向上。
Pillar 4
パフォーマンス効率
Performance Efficiency
IT・コンピューティングリソースの効率的な使用。需要の変化とテクノロジーの進化への対応。
Pillar 5
コスト最適化
Cost Optimization
不必要なコストを排除し、ビジネス価値を最大化する。消費モデルの採用、全体的な効率の測定。
Pillar 6
持続可能性
Sustainability
(2021年追加)クラウドワークロードの環境への影響を最小限に抑える。エネルギー効率の最大化。
試験のコツ
2021年に「持続可能性(Sustainability)」が6本目の柱として追加されました。以前は5本柱でしたが、現在の CLF-C02 では6本柱として出題されます。「なぜその選択肢がその柱に該当するか」を理解して覚えましょう。
ミニクイズ
Q. Well-Architectedフレームワークの「信頼性(Reliability)」の柱に関連する設計として正しいのはどれですか?
A
コストを削減するために単一のAZにリソースを集約する
B
IAMポリシーで最小権限の原則を適用する
C
複数のAZにリソースを分散させ、障害時に自動フェイルオーバーする
D
エネルギー消費を最小限に抑えるためサーバーを共有する
正解は C。信頼性の柱では「障害からの自動回復」「水平スケーリング」「複数AZへの分散配置」が重要な設計原則です。単一AZへの集約はSPOF(単一障害点)を作るため、信頼性に反します。

4 クラウドサービスモデル(IaaS / PaaS / SaaS)

クラウドサービスは提供形態によって3種類に分類されます。どのレイヤーを自社で管理し、どのレイヤーをクラウドプロバイダーが管理するかが異なります。

モデル正式名称AWSの例管理範囲
IaaS Infrastructure as a Service EC2, VPC, EBS OS・アプリは自社管理。インフラはAWS。
PaaS Platform as a Service Elastic Beanstalk, RDS, Lambda アプリコードのみ自社。実行環境はAWS。
SaaS Software as a Service Amazon WorkMail, Chime 全てAWSが管理。ユーザーはデータを入力するだけ。
覚え方のコツ
IaaS → 「インフラ借りる(箱だけ)」
PaaS → 「プラットフォーム借りる(実行環境)」
SaaS → 「ソフト使う(全部お任せ)」

制御の自由度:IaaS > PaaS > SaaS
管理の楽さ:IaaS < PaaS < SaaS

クラウドのデプロイモデル

パブリッククラウド
AWSなどのプロバイダーが提供するインフラを複数顧客で共有する形態。
プライベートクラウド
単一組織専用のクラウド環境。オンプレミスまたは専用ホスティング。
ハイブリッドクラウド
パブリックとプライベートを組み合わせた環境。AWS Outpostsがこの形態。
ミニクイズ
Q. Amazon RDS(Relational Database Service)はどのクラウドサービスモデルに分類されますか?
A
IaaS(Infrastructure as a Service)
B
PaaS(Platform as a Service)
C
SaaS(Software as a Service)
D
FaaS(Function as a Service)
正解は B(PaaS)。Amazon RDSはデータベースの実行環境(OS、エンジン、パッチ適用)をAWSが管理し、ユーザーはデータとクエリに集中できます。EC2はIaaS(OSを自分で管理)の代表例です。

5 クラウド移行戦略(6R)

既存のシステムをAWSに移行する際には、6つの戦略(6R)があります。それぞれの特徴と、どのようなケースで使うかを理解しましょう。

Rehost(リホスト) ——「Lift and Shift」とも呼ばれる。システムをそのままAWSに移す。最も変更が少なく、速い移行が可能。
Replatform(リプラットフォーム) ——「Lift, Tinker and Shift」。コアアーキテクチャは変えず、一部をマネージドサービスに置き換える(例:MySQLをRDSに移行)。
Repurchase(リパーチェス) ——SaaSへの移行。既存のシステムを廃棄してSaaSソリューションを購入(例:CRMをSalesforceに)。
Refactor / Re-architect(リファクタリング) ——クラウドネイティブな設計に作り直す。最もコストと時間がかかるが、最大のメリットが得られる。
Retire(リタイア) ——不要なシステムを廃止する。移行分析で不要と判断されたアプリケーションを削除。
Retain(リテイン) ——現状維持。移行コストがメリットを上回る場合や、規制上の理由でオンプレミスに残す。
ミニクイズ
Q. 既存のMySQLデータベースをEC2ではなくAmazon RDSに移行する戦略はどれに該当しますか?
A
Rehost(リホスト)
B
Replatform(リプラットフォーム)
C
Refactor(リファクタリング)
D
Repurchase(リパーチェス)
正解は B(Replatform)。コアアーキテクチャ(MySQL)は変えずに、実行環境をEC2の自己管理からRDSのマネージドサービスに変更するのがReplatformです。「Lift, Tinker and Shift」とも言います。

6 AWSグローバルインフラ

AWSは世界中にインフラを展開しています。リージョン、アベイラビリティゾーン(AZ)、エッジロケーションの概念と違いを正確に理解しましょう。

リージョン(Region)
世界の地理的拠点(例:ap-northeast-1 = 東京)。各リージョンは独立しており、2つ以上のAZで構成。データの主権・レイテンシーを考慮して選択する。
アベイラビリティゾーン(AZ)
リージョン内の独立したデータセンター群。各AZは物理的に離れており、独立した電源・ネットワークを持つ。複数AZへの分散で高可用性を実現。
エッジロケーション
CloudFrontのコンテンツ配信拠点。リージョンより多く存在し(400以上)、エンドユーザーの近くにコンテンツをキャッシュして低レイテンシーを実現。
リージョン選択の4原則
コンプライアンス——データの所在地に関する法規制(例:GDPR)
レイテンシー——ユーザーに近いリージョンを選ぶ
サービス提供状況——一部サービスは特定リージョンでのみ利用可能
料金——リージョンによって価格が異なる
ミニクイズ
Q. Amazon CloudFrontを使うと速度が改善されるのは、主に何を使っているからですか?
A
AWSリージョンのコンピューティングパワー
B
アベイラビリティゾーンの分散配置
C
世界中に分散したエッジロケーション
D
インターネットゲートウェイの最適化
正解は C。CloudFrontはCDN(コンテンツ配信ネットワーク)で、世界400以上のエッジロケーションにコンテンツをキャッシュします。ユーザーは最も近いエッジロケーションからコンテンツを受け取るため、低レイテンシーで配信されます。

7 クラウドエコノミクス(TCO・CapEx vs OpEx)

クラウド移行の経済的メリットを理解するための概念です。TCO(総所有コスト)の削減とコスト形態の変化を正確に把握しましょう。

概念説明クラウドでの意味
TCO Total Cost of Ownership(総所有コスト) クラウドに移行することでTCOを削減できる(ハードウェア・人件費・スペース等)
CapEx Capital Expenditure(資本的支出) サーバー購入などの先行投資。クラウドでは削減される。
OpEx Operational Expenditure(運営的支出) クラウドの従量課金。使った分だけ支払う変動費。
AWS 料金計算ツール
AWS Pricing Calculator:AWSサービスのコストを事前に見積もるツール
AWS TCO Calculator:オンプレミスとAWSのコストを比較するツール
これらのツール名も試験に出ます!
ドメイン1 試験直前チェックリスト
クラウドの定義(オンデマンド、従量課金、インターネット経由)
AWSの6つのメリット(全て言えるか確認!)
Well-Architectedフレームワークの6本柱の名称と役割
IaaS / PaaS / SaaS の違いとAWSの具体例
6Rの移行戦略(Rehost / Replatform / Repurchase / Refactor / Retire / Retain)
リージョン・AZ・エッジロケーションの違い
CapEx vs OpEx / TCO の概念
ミニクイズ
Q. 企業がオンプレミスからAWSに移行する際、コスト形態はどのように変化しますか?
A
CapEx(資本的支出)からOpEx(運営的支出)に変化する
B
OpEx(運営的支出)からCapEx(資本的支出)に変化する
C
どちらも増加する
D
コスト形態は変化しない
正解は A。オンプレミスではサーバー購入などの大きな先行投資(CapEx)が必要ですが、AWSでは使った分だけ支払う従量課金(OpEx)に変わります。これによりキャッシュフローが改善され、必要なときに必要なだけリソースを調達できます。